平成30年7月豪雨により、被災された方へ心からお見舞い申し上げます。

 

トータルブレインケア『認知機能の見える化』研究所です。

日本では、近い将来起こる可能性が高い大きな地震への備えの必要性は、しばしば叫ばれていて、おそらくたいていの方が頭ではその必要性が分かっているように思います。
ところで、今回の災害は想像を超えた豪雨によってもたらされました。
「雨」というと、しとしとと降り続く雨は鬱陶しくはあるものの、大きな台風の到来でもない限り、そんなに大きな被害をもたらすことになると予測できた人は少なかったのではないかと思います。

 

降りやまない雨はない、とは思うものの、今回の雨はその量も勢いもすさまじく、そのすさまじさがいつまでも持続し、本当に止むのかと疑う気持ちが付きまとう雨でした。
洪水が起こった地域では、避難所が開設されています。
これから、日常生活を取り戻すために、住む場所や生活環境がスムーズに整えられることを祈るばかりです。

 

さて、福祉的な観点から被災に関して目を向けると、移動や判断に支援が必要な方が、

① 適切に逃げたり留まったりして、避難できただろうか?
② 避難医療やケアへのニーズが継続されて満たされているだろうか?不足があるとすれば、きちんと避難先でそれを伝え、手に入れることができているだろうか?
③ 被災後の非日常となった環境で、不足のない生活が継続できているだろうか?

このあたりが、気になる部分かと思います。

そして、①~③は、どんな災害で、どんな状況で被災して、本人や家族や地域にどのような災害をもたらしたかということと、本人の状況によって、何をどの程度どう支援したらよいのかは、変わってきます。

 

災害時の医療支援や福祉支援は、その時々に応じて必要な体制が採られ、命を救い、生活を続けていくように整えられます。
そのような専門家の支援があるわけですが、しかし、発災時の人の命を守ることにつながるのは、やはり一人一人の判断と行動、そしてご近所など身近な人の助け合いによる部分は大きいとおもいます。

 

前置きが長くなりましたが、今回は、避難する際の準備の確認の一つとして、認知機能・特性と避難行動の関係についてまとめます。

 

■認知機能と災害

 

認知機能とは、広辞苑の定義では「外部の情報を能動的に収集し、それを知覚・記憶し、さらに推理・判断を加えて処理する過程」(詳細なまとめは:認知機能の見える化プロジェクト )とされています。
わかりやすく言うと、外部の状態について情報を集め、あたまの中に入れ、考えて行動を決める、というような働きです。

 

発災時を考えると・・・

① 外部の情報を能動的に収集 : 地震の緊急速報を受信する、台風等の警報等を知り天気予報をたしかめる

② 知覚・記憶 : 速報等から地震が来る情報を得て覚えておく、天候の変化の情報を得て覚えておく

③ 推理・判断を加えて処理 : 地震の場合場所や状況に応じて取るべき判断をし実行する、天候悪化の場合の避難方法や避難場所・避難の実行を決める基準を考慮して実行する

 

日常生活の行動は全般に、さまざまな認知機能を総合して行っていますが、特に災害時には、判断の速度、正確性が必要とされ、判断を誤った際には、命にも危険が迫るという点で、日常生活上の意思決定と行動よりもはるかに高度な処理がもとめられます。

 

■①外部の情報を能動的に収集

これから起こる災害についての情報収集は、どのような災害かで手段やスピードは変わってきます。
「平成30年7月豪雨」では、その被害の大きさは想像を超えていましたが、大雨になるという予報は数日前から出され、テレビやラジオでは被害の情報が放送され、携帯やスマホでは避難準備や避難勧告等の知らせが届いていました。
気象の変化にともなう災害の予兆は、突然の竜巻などを除き(竜巻にも、注意報等はあります)、特に台風や雨や雪などでは、逃げ延びるために備える時間に比較的余裕があると言えます。

 

一方、地震に関しては、揺れる前に速報が届く仕組みができたとはいえ、震源地との位置関係によるなどで、携帯のアラームが地震の到来を知らせたときには、既に揺れ始めているということもあり得ます。事前に知ったとしても数秒前なので、雨や雪の災害と比べると、逃げ伸びるために備える時間はないに等しいものです。

 

ここで、災害に関する情報を「能動的」に収集するという点において考えると、テレビやラジオ、スマホなどの電子機器や機械を通じて得られる情報は、まずその機器を所持し、電源を入れていたり充電ができているということは、そこから情報がえられる大前提です。
また、それらの機器がそもそも利用できない場合には、予報や速報を受信する手段はかなり制限されるか、持っていないことになります。

 

認知機能を働かせる以前の、情報収集を行う手段の段階で、情報格差による結果の差が生まれる可能性があります。

 

また、当然、情報伝達手段というものは、スマホ等のICT機器だけではないわけですが、ラジオの場合はしっかり聴こえなければなりません。
ご近所の人や家族からの電話での知らせを期待することも、そもそも、電話を取り、電話の声が聞き取れるだけの聴力が必要です。
とっさの判断を行うための情報は、目で見て何が起こっていて、どこが危険でどこが安全かを判断するために、視覚も重要です。

 

つまり、能動的に情報収集するということは、聴覚や視覚の機能に低下がある人にとっては、平常時には別の方法で代替して生活に支障がない場合でも、災害時のとっさの判断が必要な場合には難しいことが増加すると考えられます。

 

認知機能は、「考える」や「理解する」「診断する」という働きだけで成り立っているのではなく、そもそも、情報を入力し、情報として取り出すことが前提です。
その、情報入力と選択部分に関する認知機能が低下している場合、特に災害時においては適切な理解と支援が必要だと言えます。

 

■②知覚・記憶

災害についての情報が耳や目から入った場合、次に認知機能の働きが必要なものは、それを危険だと感じ取り、その状況を頭の中に収めることです。

 

危険を知らせるアラートが鳴り響いても、テレビやラジオや近所の人が繰り返し避難を呼びかけても、それが「意味」として届いていなければ、判断と行動には結び付きません。

 

アラーム音や、声、記号や文字を、きちんと危険に即して理解するためには、「音の意味を覚えて、理解する」「声を聴き分け、意味を理解する」「記号を見分け、意味を理解する」「文字を見分け、読み、意味を理解する」という行動が必要です。

 

認知機能に低下はなくても、例えば日本語が分からない外国から来られた方の場合、当然聴力も視力も問題がないとしても、周囲が日本語だらけの情報であれば、何がどうなっているのかを、正しく頭の中で理解しておくことはできません。

 

場合によっては、ゼスチャーについても、文化や習慣が異なると通じない可能性もあるかもしれません。

 

何らかの形で情報に触れ、それが価値あるものだと理解し、また、正しくその価値を理解する認知機能は、音声・文字・図形等に関する理解力に関係し、災害時の素早く適切な判断と行動の実施に大きな影響を与えます。

 

余談ですが、警報や準備をするような知らせも、発報する側がどんなに頑張っても、受け手側が『いや、でも、大丈夫でしょ』と思ってやり過ごしていると、意味がありません。
発災時、自分の命を守れるのは、自分しかいません。子どもの命であれば、保護者にかかっています。
本来、いろんな認知機能を発揮して行動ができるのに、防災にだけは「自分だけは大丈夫」というような思い込みが出てしまうのは、

 

また、もし、理解できても、すぐに忘れてしまう場合はどうでしょうか。私たちは日ごろ意識せずとも状況を頭に止めて、処理を行うことができています。「ついさっき」のことや、「しばらく前」のことが覚えていられないようであれば、天気についての警報が出たとしても意味がないでしょうし、天気予報をみて数日先の天気を確認しても、適切な避難や防御の行動には結び付きにくいでしょう。

 

その時々の判断を適切にするために、私たちは刻々と変わる状況を、記憶にとどめ、総合して判断していく必要があります。
そして、その認知機能の部分が低下しているのであれば、その部分に関しては支援が必要だと考えられます。

 

■③推理・判断を加えて処理

災害に関する情報を得て、それを覚え、そこから先どうするかは、「今後どうなるかを予測し、適切だと思われる行動を判断し、実行する」必要があります。

 

地震の場合、緊急のアラートを受信し、「地震が来る!」とわかったら、安全な身の隠し場所を確認したり、子どもを守る行動にはいるでしょう。
この際、とっさの間に瞬時に判断し行動できるかもしれませんし、あまりの揺れの大きさに動く事すらできない可能性もあります。
その後、揺れがおさまったら、被害や状況に応じて、何をすべきかは違ってくるでしょう。

 

逃げ道を確保する為に玄関を開ける、誰かを助け出す、持ち物を持つ、ガスの元栓を締めるなど、次に取るべき行動も、揺れがおさまった後に次々に判断していかなくてはなりません。

 

この、次々に判断するためには、ある程度の今後のリスクや展開が推理・予想できるからこそ、適切におこなえます。
例えば、地震の場合、大きな揺れが起こった後、続いてある程度大きな揺れが再度起こる可能性があります。
地震から火災が発生する場合もあります。
戸を閉めた家の中にいると、そのまま建物にゆがみが生じた際に出入り口が開かなくなる可能性もあります。
逃げるためにはだしで歩くと、ガラス片で足を怪我するかもしれませんし、折れた柱などを素出て掴むと、手にとげが刺さって大変です。
むやみやたらと逃げることはもちろんできませんし、地震の際に安全な場所はどこか、という事前の知識と、その時の災害の状況によって、どこへ向かって逃げるべきか・もしくはとどまるべきかを考えなければなりません。

 

余談ですが、電車の中で大きな地震が発生した場合、電車は止まり、しばらくの間は降りられません。
しばらくの間というのは、被害にもよると思いますが、数時間はかかる覚悟が必要です。
トイレのない電車の場合は、どうなるのでしょうか。
私の経験では、12車両に2個しかトイレのない通勤列車が地震でとまり、約3時間車内にとどまった体験では、トイレは当然長蛇の列になりました。
もし、「こんな場合、数時間出られない。トイレはめちゃくちゃ混む」という事を予測できておれば、『早めにトイレに行こう!』と意思決定でき、トイレに間に合う可能性が高くなるでしょう。

 

また、雨や雪や台風の場合は、天気予報を聞いて今後の変化をとらえ、その情報を元に自分が住んでいる地域の状況が予測できたら、必要な時に避難ができる可能性が高まります。
天気予報は、雨量情報はある程度市町レベルでわかりますし、定点観測カメラによって河川等の状況も見ることができます(見たい時には、たいてい混雑していますが)。
その情報を元に、「この地域の、この部分は土地が低いから水が集り始めてる」「あの道は通れなくなる」「このままだと車が浸水してしまう」など、起こりそうなことを考え、それに合わせて避難することを考えることができやすくなります。

 

予測したり推理するという事は、あらゆる認知機能を駆使し、あたまの中で物事を多面的な角度から見渡し、考える必要があります。未来への変化を考えるという点では、あたまの中で時間軸を先に進めた状態を作る必要があるともいえるでしょう。

 

避難に備える、避難するということは、実際に行動できてこそ身の安全が確保されるものです。
理解や判断、そこから行動に移すまでの認知機能に低下がみられる場合、確実に行動し、適切な場所へ到達できるような具体的で力強い支援が必要な場合が考えられます。

 

■避難を行うために大切なこと、地域で支えるために

最も大事な、「避難する」という行動を起こすためには、これまでの一連の認知機能の働きが稼働することがひつようです。その上で、行動に反映されるものです。

 

認知機能の働きが、何らかの状態でうまくいかなかった場合、リスクの把握や予測は難しく、それを回避する行動が難しいくなる背景を、上記で③ステップの中から確認しました。

 

情報を得る、情報を蓄える、試行する、行動に移す、どの過程でも、認知機能の働きは必須です。

 

そして、ここまででわかることは、認知機能の低下が起こっている場合や、器質的な低下はなくとも外国語しか話せない人が日本語環境に置かれた場合などのような状況では、その人単独で、自分自身の生命を守ることは難しくなる、ということです。

 

例えば、身体が動きにくく、日頃から何らかの介助がされている方の場合は、「裏のおばあちゃん、寝たきりだから、助け出さなきゃ!」と思う人もいらっしゃると思います。
身体の要介護については、見た目にもわかりやすく、日頃からの必要性も周囲が感じ取りやすいために、いざという時にも、ピンときて助けに行く必要があると思う場合がおおいのではないかと思います。

 

しかし、発災時の支援は、寝たきりの方や物理的に移動が難しい方だけでなく、情報へのアクセスが難しいかた、状況が理解できにくい方、判断ができにくい方も必要とされるものです。

 

判断力や理解力というのは、外から見えにくく、難しいものです。
災害が起こった直後、もちろん守るべきはまずは自分自身なのです。
しかし日頃の備えによって、自分と家族、そしてご近所や周辺地域で必要とされる支援について考えてみることは、自然災害の多い日本の地域社会で生活する私たちにとって大切なもののように思います。
そして、状況に応じて、助け合える地域社会を作ることは、災害発生時だけではなく、日常から過ごしやすい互助の社会を作っていくものでしょう。

 

■日頃から、自分や大切な人の認知機能を確認しましょう

見える・聞こえる・思うように話せる
見つけ出せる・探し出せる・聞き分けられる
考えられる・推理できる・自分のことを正しく伝えられる
推理できる・判断できる・段取ができる・決断できる

 

認知機能には、さまざまあります。
日ごろから、「認知機能」について親しむことで、自分自身を理解し、
相手を理解するためのヒントを得ることができます。

 

認知機能は、人によってさまざま。
記憶力のすごい人、そうでもないひと
集中がずっと続く人、気が散りやすい人、集中しすぎる人
計画をすることが上手い人、苦手な人・・・

 

自分の特性を知ることは、日頃の生活をもっと快適に楽しく過ごせるヒントです。

 

是非、ご自身で、ご家族で、ご近所で、地域で
認知機能について、もっとお互いに知る機会をもってください。

 

脳活バランサーCogEvoは、「認知機能を楽しく5分で、ネットで見える化」する
あなたと、あなたの大切な人たちのための、ICTツールです。

ぜひ一度、ご体験ください。

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