高齢者の外出手段:免許返納後にそれは代替手段になるのか?

■タクシー定期券のはなし

さて、外出。別に春ではなくても、年中外出の必要はあります。いくら現代がネット社会で、ぽちっとボタンを押すだけで、翌日にはモノが届く世の中だとしても、やはりある程度の外出は必要です。外出がお好きな方も多いでしょう。買い物、外食、ウインドーショッピング、趣味に出かけたり、もちろん、通院、送迎、仕事での外出も必要です。

一方、高齢者の運転については、賛否両論。事故が起こるたびに、免許返納の必要性やその基準についてさまざまな意見が飛び交います。免許返納がじわじわと進んでいる様子もありますが、課題もあるような・・・。

今日は、高齢者の免許返納とその後の外出について考えてみましょう!

 

■運転免許返納の現状

まず、下のグラフを見てください。
免許返納者数の推移です。

運転免許返納者数の推移(『認知機能の見える化』プロジェクト より引用)

運転免許の返納者数は年々増えています。特に、70歳以上(上のグラフでは、黄色、グレー、オレンジ、水色の棒グラフ。赤い折れ線で示されている)の返納数が2012年あたりから増加し、2014年以降さらに急激に増加しています。背景には、2011年の道路交通法改正により、免許の返納を行った人への運転経歴証明書の交付や、免許返納をした方への特典が充実しはじめたことがあるでしょう。

運転免許証を身分証明書(本人確認証)として使いたい人にとって、免許返納で本人確認ができるものがなくなってしまうのは困りますが、運転経歴証明書(平成24年4月1日以降発行のもの)が利用できるので代替手段がある、ということになります。

私はこのグラフをみて、70歳~75歳(黄色)の方がすごく増えているなぁと感じています。以前、高齢者という年齢を引き上げよう!という話題が出ていましたが、70歳過ぎでまだまだ社会で現役時代と同様に活躍されている方は多い一方、運転免許を返納されたらどのような生活をされているのかな?と思います。一方で、その後いずれ車のない生活をするのであれば、少し早めのうちから慣れられるのだとすれば、早めの返納もアリか?と考えたり・・・。皆様は、どうお考えですか?

 

■いざ、免許返納の提案…しかし、そんなにすんなりできるものでもない

運転免許の返納を進める話は、ニュースの中でも、身近なところでも聞きます。「うちの父もそろそろいい年で、運転をやめないといけないよ、とは話すものの、返納まではいたってない」という話を聞きます。

運転免許を運転する為に必要とし、実際に今の生活で運転をしている高齢者にとっての免許返納は、「高齢になったから、危ないので返納しましょう」だけでできるものではありません。運転し、移動することで、生活のあれこれができていたのでしょうから。なので、次のようなやり取りはよくあります。

家族Aさん 「そろそろ、年だし運転免許、返納した方がいいよ」

高齢者Bさん「運転できなくなったら、生きていけないじゃないか!!!!!」

というやり取りになるわけです。運転することで生活が成り立っているなら、それをやめろということは、生活をやめろということに他ならない、そういうふうに考えてしまうのは不思議ではありません。

家族Aさん 「自転車もあるし。大通りまで出たら、バスが使えるんだから大丈夫よ」

高齢者Bさん「自転車?畑に行くのに、自転車でどうやって道具を持っていくんだ?肥料を運ぶんだ??収穫したスイカや白菜をどうやって持って帰ってきたらいいんだ。そして、バス!?そんなの、一回も乗ったことないし、どこからどこへ行くんだ?行きたいときにくるものでもないじゃないか。雨の日はどうする。荷物がたくさんあるときはどうするんだ。買い物でたくさん買って帰ったら、持てないだろう。病院につれていくときは、どうしたらいいんだ。駄目だ駄目だ。バスよりも車がいい。車がないと生活できない!」

まぁ、そうですよね。昨日までどこへ行くにも車に乗っていた人に、「自転車とバスで」と言っても、そう簡単にシフトできるわけはないと思います。

 

■それは、本当に代替手段になるのか?

山間部に住んでいると、バスも本数がすくなかったり、そもそもバスがない場合もあります。では、都市部に住んでいて、バスが縦横無尽に走っている場合は、それで代替できるのか??というと、そう簡単なものではなさそうです。

『認知機能の見える化』プロジェクトで、「外出と交通利用」についてまとめたページがありますので、詳しくはこちらを参考にしていただきたいのですが、Aさんの言葉の中で、下記について注目です。

  • 今まで乗ったことがない
  • どこからどこへいくのかわからない
  • 乗るまでに歩いていかなければならない

バスで行くには、時刻を確認し、行先を確認し、バス停まで行き、揺れる車内で過ごし、必要なバス停で降りる。帰りは、また時刻を確認し、行先を確認し、乗って、車内で過ごして、自宅最寄りで降りて、歩いて帰る。乗換が必要な場合は、もっと複雑です。間違えて載った場合や、間違えて降りた場合、間違えて降りられなかった場合など、臨機応変な判断が必要です。

これは、かなりハードルが高い。ましてや、認知機能が低下して運転に支障があるかもしれない、という状態で、計画力や記憶力、注意力、見当識や空間認識力をフルに使う「バスで移動!」というのは、本当にハードルが高いものです。

単純に、「車がなければ、バスで移動すればいいのよ!」みたいな話ではないことが推測できます。

つまり、車が持つ、ドア~ドア、荷物の量、雨を防げて、快適という条件を満たし、かつ安全で、もちろん経済的な方法があればいいのですが・・・。

なお、私は以前「移動手段はタクシーもありますが」と言ったところ、「いくらかかると思うんだ?」と言う話になり、没アイデアに…。今のところ、タクシーは頻繁に「ちょっとそこまで」と使うとけっこうかかります。初乗り料金で行ける範囲内でも、往復で1300円ほど、一日に2回でかけたら2600円ほど、週に10回でかけたら13000円ほど、1ヵ月なら…、初乗りを越えた距離なら…。たしかに、その金額だけを考えたら、なかなか厳しい・・・です。

そんなわけで、定期券で利用できるタクシーというのは、便利さや金額面を考えると、なかなか良さそうな感じではないかと思うわけです。

しかし、運転免許証は、証明書や移動手段だけでなく、運転することそのものが趣味であったり、アイデンティティのようなものだったりする部分もあります。運転免許の返納のお話は、安全確保から考えると一刻も早く、と思うものですが、同時に、生活の質の維持や向上、また本人の気持ちにも寄り添って、取り組んでいく課題だと考えています。

『認知機能の見える化』プロジェクトもご覧ください。