認知機能の計測と治療や薬、そして支援への取り組みに寄せて

認知症治療薬開発は「2つの壁」を超えられるか

 Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

https://forbesjapan.com/articles/detail/19524/2/1/1

 

お読みになられた方も多いかと思います。

ところで、認知症の治療薬は現在4種類。1999年にアリセプトが登場するまでは、例えば1972年に有吉佐和子氏が小説『恍惚の人』を発表し、認知症が社会的に認知されたものの、治療方法はない状態でした。ですので、認知症の人の支援について振り返った時、その小説のタイトルとともに、認知症治療薬の登場は大きな意義をもっていると話されることが多いものです。

しかし、現在、治療薬は4種類に増えたもののこれらはすべて進行をゆるやかにする薬とされ、アルツハイマー型認知症を治療できる新しい薬はまだ登場していません。その開発には2つの壁があると、上記の記事では述べられています。2つの壁とは要約すると次のようになるかと思います。

 

  1. アルツハイマー型認知症の原因がわからない。原因がわからなくても、薬が効果を発揮したとなれば治療につながるが、認知症の場合、認知機能を測定するスケールに曖昧さがあること、本人や家族への問診によって判断されていることから、血圧の薬と血圧値などのように評価ができない。
  2. 臨床試験が難しい。認知症のごく初期の段階の人を探し出すことは、認知機能スケールが曖昧であることもあり難しい。また、アルツハイマー型認知症はゆっくり進行するので1年半程度の臨床試験では有効かどうかを確認するのが難しいし、コストもかかる。

 

この2つの壁がとても大きいものである、と述べられていました。

 

薬を開発する知識も技術も何も持たない私たちができることは、「良い薬ができますように!」と願うことだけのような気がします。「数年後、できているんじゃないかな」と楽観的に思ったりもします。なぜなら、医学や科学の進歩は目覚ましいので。そして一方、私たちにできることは、認知症について知って考え、できることに取り組むことでしょう。

私たちが日ごろからできる認知症についての取り組みは、まず、認知症について知って、予防行動です。さまざまな予防の方法が提唱されていますが、残念ながら確実に予防できる方法は今のところありません。また、「認知症」と一言でいうことが多いですが、背景には200を超える疾患が認知症を引き起こすとされていて、簡単にこれで予防できる!というものでもないのでしょう。しかし、一般的には、生活習慣病の予防を心がけ、適度な運動、適切な睡眠、ほかの人と交流したり外出したり、趣味などの活動をすることが良いと聞きます。また、パズルやクイズなどのあたまのトレーニングをしたり、デュアルタスクと呼ばれるあたまと身体の運動を同時にする、など、具体的な方法が本やネットや新聞で紹介されていることもあります。出来る範囲で、認知症だけでなく、身体も健やかに生活できるように、介護予防・認知症予防を心がけることはよいことでしょう。知るためには、認知症サポーター養成講座(オレンジリングの活動)を受けてみるのも良いでしょう。

また、自分だけのことではなく、住みやすい社会を作るために、地域や職場での人とのつながりを考えることも、私たちにできることでしょう。今後、高齢者がさらに増加し、それにともなって認知症の人も増加するであろうことから、住み慣れた地域で安心していつまでも暮らせるように、と、「地域包括ケアシステム」が構築され、自助・互助・共助の社会づくりが進められています。認知症の人や家族への支援は、地域では認知症カフェの開催や、認知症サポーター養成講座の開催などがあり、また、本人への支援では、地域ケア会議や認知症初期集中支援チームの稼働が地域包括支援センターなどを中心に展開されています。認知症カフェは、介護関係の事業所や自治会、または有志で開催されている場合もあります。また、認知症の人と家族の会など、本人と家族を支える団体もあり、困っていることなどを相談する窓口もあります。さまざまな地域のサービスを知って、お互いに支え合える地域づくりということが、今後ますます大切になるでしょう。

ところで、冒頭に紹介した「認知症治療薬開発は「2つの壁」を超えられるか」(フォーブス ジャパン)の記事の中で、たびたび述べられている「認知機能スケール」について、少し考えてみます。

私たちは、日常の生活のなかで、体重計や血圧計や体温計を使っています。日頃から体重や体脂肪率を測ることで、食べすぎや脱水を知ることができます。平熱を知っていると、すこし不調だと思う時に体温の変化で身体の異常にはやく気づくことができます。子供の頃、プールの朝に体温を計り、元気(だと思っている)なのに37度を超えていてプールに入れず・・・という事がありました。身体のさまざな値を計測することは生活の中でごく当たり前に行われています。では、「あたま」についてはどうでしょうか?『今日はしんどいなぁ、あたまの調子をはかろうかな』ということを思いつく人はあまりいないのではないかと思います。なぜなら、少ししんどいぐらいで、あたまの調子をそう簡単に測る手段はありませんから、「さぁ、認知機能を計ってみよう」という概念を私たちは今のところ持っていないに等しいのです。

もし、認知機能を手軽に測ることが出来たら、それが生活にもたらす影響はいろいろあると想像できます。普段よりも低下した状態であれば、無理をせずに行動に配慮しようと事前に意識できるかもしれません。低下した状態が続いているようであれば、受診をしてみようと思うことができるでしょう。早期に変化を発見できればできるほど、早期に受診して治療などのスタートがきれます。そして、認知機能スケールが曖昧さを排除して確立することができれば、お薬の開発や、認知症や認知機能に影響する病気の診断にも役立つことにつながります。

さて。

『認知機能の見える化』研究所では、「脳活バランサー」の開発や活用を中心に、まさに、上記で述べている「認知機能を手軽に測り、日々の生活を向上させる」ことについて、日々考えています。「脳活バランサーCogEvo」を利用することで、毎日でも定期的にでも、手軽に認知機能について確認し、また、認知機能を5つの要素(計画力、見当識、記憶力、注意力、空間認識力)ごとに推移や全体のバランスをみることができます。この点においては、体温計や血圧計のように、日常の中で手軽にりようできるツールと言えます。より多くの方に、認知機能について知っていただき、また、それを自分で確認することができることや、確認する習慣を持って頂けるように務めていきたいと考えています。

認知機能というものは、脳の働きそのものであり、未知の部分もまだまだあるものですが、計測し数値化し、そして見える状態にグラフや図形化することで、私たちの日常生活にはいろいろな利点をもたらします。曖昧さのないスケールの開発をめざして、また、それ以前にも、皆様の生活のなかで、認知機能の状態や特性に意識を向けることでより良い生活が送れるように、『認知機能の見える化』研究所はこれからも日々活動を続けていきたいと思います。